はじめに
入院や手術を経て退院されたあと、「思ったように動けない」「あっという間に疲れる」「足元が前よりも頼りない」と感じる方は少なくありません。これは加齢のせいだけでなく、入院中の安静と退院後の活動量低下が重なって生じる、ごく一般的な変化です。
この記事では、退院後に体力が落ちやすい理由を整理し、自宅で無理なく続けられる予防策と、訪問型リハビリの活用法を、理学療法士の視点から分かりやすくまとめます。
退院後に体力が落ちやすい理由
入院中の安静による「廃用症候群」
入院中はベッドで過ごす時間が長くなりやすく、筋肉や関節、心肺機能などが使われない時間が増えます。これによって全身の機能が少しずつ低下していく状態は 廃用症候群(生活不活発病) と呼ばれます。健康な方でも、ベッドで安静にしていると 1週間で10〜20%、3〜5週間で約50%もの筋力が低下する と報告されており(健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)参照)、高齢の方ほど、この変化は急速に進みやすい傾向があります。
食事量・栄養摂取の変化
入院中は食欲が落ちることがあり、退院後もしばらく食事量が戻りにくい方が多くいらっしゃいます。とくに たんぱく質の摂取不足 は筋肉量の維持に影響し、加齢による筋肉量・筋力の低下である サルコペニア や、健康と要介護の中間段階である フレイル の進行につながることが知られています。65歳以上の方では、たんぱく質を一日に体重1kgあたり1.0g以上摂取することが推奨されています(健康長寿ネット「フレイル・サルコペニア予防の視点からの栄養管理」参照)。
退院後にリハビリの頻度が一気に減る
リハビリ病院では1日に複数時間のリハビリが行われますが、退院後は介護保険の訪問リハビリでも週に1〜2回程度が一般的です。せっかく入院中に積み上げた身体の調子が、退院後の数週間で大きく変わってしまうのは、活動の総量が急に減ることが大きな理由のひとつです。
体力低下が引き起こす具体的な変化
歩行能力・移動範囲の縮小
下肢の筋力が落ちると、歩く速度が遅くなり、長く歩けなくなります。外出が億劫になり、生活範囲が家の中だけに狭まることで、さらに体力が落ちる――この悪循環が起きやすいのが退院後の数週間〜数ヶ月です。
バランス能力の低下と転倒リスク
筋力だけでなく、体のバランスを取る感覚も低下しやすくなります。退院後の早い時期に転倒すると、骨折や再入院、そこからの大きな機能低下につながりやすく、もっとも避けたいリスクのひとつです。
日常生活動作の不安定化
「椅子から立ち上がるのに時間がかかる」「お風呂のまたぎが怖い」「服を着替えるだけで疲れる」など、これまで当たり前にできていた動作に時間や努力が必要になります。本人の自信が下がり、活動への意欲がさらに落ちることも珍しくありません。
自宅でできる体力低下の予防策
毎日の活動量を「少しだけ」確保する
もっとも大切なのは、「動かない時間をなるべく作らない」 ことです。ベッドや椅子に長時間座りっぱなしの時間を減らし、1時間に1度は立ち上がる、家の中を少し歩く、洗濯物を干すなど、日常動作のなかで体を動かす機会を増やしていきます。「運動」と意気込まなくても、生活動作そのものが体力維持に役立ちます。
簡単な筋力トレーニング
無理のない範囲で取り入れたいのが、下肢の筋肉を中心とした簡単な運動です。たとえば次のようなものから始められます。
- 椅子からの立ち座り:1日10回×2セット程度から
- かかと上げ:壁や椅子に手を添えて、ふくらはぎを使う
- 太もも上げ:椅子に座った状態で、片脚ずつゆっくり持ち上げる
痛みや強い疲労が出るときは、回数を減らすか中断してください。「軽く息が弾む」程度が、続けやすい目安です。
バランス練習
転倒予防には、バランス能力を保つ練習が役立ちます。「片足立ち」と「スクワット」は、自宅で取り組める代表的なロコモ予防運動として、整形外科学会や公的機関でも推奨されています(健康長寿ネット参照)。最初は壁や椅子に手をついて、5〜10秒の片足立ちから始めれば十分です。
栄養と水分の見直し
体力維持には、運動だけでなく栄養と水分の確保が欠かせません。とくに たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)を毎食少しずつ取り入れること、こまめな水分補給を心がけることが、フレイル予防の基本とされています。食欲が落ちている場合は、栄養補助食品の活用も選択肢のひとつです。
訪問リハビリで予防を続ける意味
退院後の予防は、「何をすればよいか分かること」と「無理なく続けられること」の両方が必要です。訪問リハビリでは、ご自宅の環境とご本人の体調を見ながら、その時々に合った運動量と内容を調整できます。
「自分で続ける自信がない」「家族だけで進めるのが不安」と感じる時期にこそ、専門家が定期的に関わることで、運動の習慣を生活のなかに無理なく組み込みやすくなります。とくに退院後3〜6ヶ月は、生活リズムを立て直す大切な時期です。
Avensでできるサポート
Avensは、理学療法士が運営する自費訪問リハビリサービスです。ご自宅へお伺いし、ご本人の体力と生活に合わせたサポートを行っています。
- 退院後の身体状態と生活環境を踏まえた、無理のない運動プログラムのご提案
- 毎日の活動量を増やすための小さな目標設定とフォロー
- 転倒予防のためのバランス練習・住環境チェック
- ご家族への声かけや介助方法のアドバイス
- 体調や生活の変化に合わせた計画の調整
「退院したばかりで何から始めればよいか分からない」「自主トレが続かない」という段階のご相談も歓迎しています。話を聞くだけでも大丈夫です。
注意点
自宅での運動は、安全に行うことが最優先です。次のような場合は、運動を控えるか、医師や医療機関へご相談ください。
- 強い痛み、息苦しさ、胸の不快感がある
- めまい・ふらつきがある
- 発熱、体調がいつもと違うと感じる
- 主治医から運動制限を指示されている場合
運動は「医療の代わり」ではなく、医療と並行して、生活を整えるための一つの手段です。判断に迷うときは、まず医療機関にご相談ください。
まとめ・相談案内
退院後は、入院中の安静・栄養変化・リハビリ頻度の減少が重なって、体力が落ちやすい時期です。「動かない時間を減らす」「簡単な運動を毎日少しずつ」「栄養と水分の確保」を組み合わせることで、生活の中で予防していくことができます。
Avensでは、退院後の生活に不安を抱える方やご家族のご相談を受け付けています。「自分の場合はどう進めるとよいだろう」という段階でも構いません。LINEから気軽にメッセージをお送りください。
執筆
最終更新:2026年5月15日
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を行うものではありません。症状には個人差があり、痛み・急な変化・強い不安がある場合は、医師や医療機関にご相談ください。