はじめに
「買い物や通院に出るのがおっくうになった」「歩いていると股のつけ根が痛む」「片脚に体重をかけると体が横に揺れてしまう」――変形性股関節症の方やご家族から、こうした外出・歩行のご相談をよくいただきます。痛みや歩きにくさから外出を控えるようになると、活動量が減って筋力が落ち、ますます出かけにくくなる、という悪循環につながりやすいのがこの病気の特徴です。
この記事では、変形性股関節症で外出がつらくなる仕組みと、自宅でできる運動・外出を続けるための工夫を、理学療法士の立場で具体的に解説します。
変形性股関節症で股関節に起きていること
変形性股関節症は、太もものつけ根にある股関節の軟骨がすり減り、関節に痛みや変形、動きの制限が起こる病気です。
日本人は「二次性」が多い
日本では、生まれつき股関節の受け皿(臼蓋:きゅうがい)が浅い「臼蓋形成不全」をもとに進む二次性の変形性股関節症が多く、とくに中高年の女性に多く見られます。受け皿が浅いぶん、長年のあいだに関節へ負担が集中しやすいのが特徴です。
お尻の横の筋肉(中殿筋)が弱りやすい
股関節を横で支える主役が、お尻の横にある中殿筋(ちゅうでんきん)です。痛みでかばって動かさないとこの筋肉が弱り、片脚立ちのときに骨盤を水平に保てなくなって、歩くときに体が左右へ揺れる(跛行:はこう)原因になります。中殿筋を保つことが、外出時の安定した歩きを支える土台になります。
「外出がつらい」の正体:歩き方と動作の変化
体が横に揺れる歩き方(跛行)
中殿筋が弱ると、一歩ごとに上半身を痛む側へ傾けてバランスを取る歩き方になりやすく、長く歩くと疲れやすく、見た目にも気になって外出を控える一因になります。
関節の動きが狭くなる
股関節の動きが制限されると、靴下を履く・足の爪を切る・あぐらをかく・低い場所のものを取るといった動作がしづらくなります。段差をまたぐ、車に乗り込むなど、外出に必要な動作にも影響します。
連続して歩くと痛む・脚の長さの違い
進行すると、痛む側の脚がわずかに短く感じられること(脚長差)があり、連続して歩くと痛みが強まりやすくなります。「どれくらいの距離で痛むか」を知っておくと、外出の計画が立てやすくなります。
自宅リハビリで大切にしたいポイント
股関節まわりの筋力(中殿筋・大殿筋)
外出を支えるのは、お尻の横(中殿筋)とお尻の後ろ(大殿筋)の筋力です。痛みの出ない範囲で、これらを保つ運動を習慣にすることが安定した歩行につながります。
関節の動きと、痛みのない範囲
動かせる範囲を保つことも大切ですが、痛みを我慢して無理に深く曲げるのは逆効果です。「痛みが出ない範囲でゆっくり」を原則にします。
自宅でできる運動の例
痛みが出ない範囲で、股関節を支える筋力を保つ運動です。回数は目安なので、その日の状態に合わせて調整してください。
- 横上げ(股関節の外転):横向きに寝て、上の脚をまっすぐ斜め上へゆっくり上げ下げ(左右10回)。中殿筋を直接鍛えられます。
- お尻上げ(ブリッジ):あおむけで両膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げて下ろす(10回)。大殿筋と体幹を働かせます。
- うしろ蹴り:椅子や手すりにつかまって立ち、片脚を後ろへゆっくり引く(左右10回)。お尻の後ろを鍛えます。
- 股関節セッティング:あおむけで脚を伸ばし、お尻に力を入れて5秒キープ→ゆるめる(10回)。関節に負担をかけずに行えます。
- 太もも前・お尻のストレッチ:痛みのない範囲でゆっくり伸ばし、関節の動きを保つ。
運動中の鋭い痛みは中止のサインです。翌日まで痛みが残るときは、回数や強さを控えめにしましょう。
外出を続けるための工夫(関節保護・補助具)
運動と合わせて、股関節への負担を減らす工夫で、外出を続けやすくなります。
- 杖を使う:杖は痛む股関節と反対側(健側)の手に持つと、股関節にかかる体重を効率よく減らせます。
- 歩行車・シルバーカーを活用:荷物を載せられ、休憩の椅子にもなり、外出の安心感が高まります。
- こまめに休憩をはさむ:痛みが出る前に座って休むと、結果的に長く動けます。
- 深い曲げ・重い荷物を避ける:低いソファ・しゃがみ込み・片手での重い荷物は負担が大きいので避ける。
- 履きやすい靴・段差対策:かかとの安定した靴、玄関の手すりや踏み台で出入りを安全に。
体重は股関節への負担に直結するため、運動とあわせて食事のバランスを整えることも、関節を長く守る助けになります。
運動の強度と続け方の目安
運動のきつさは、主観的なつらさを表す「Borgスケール」で11〜13(楽である〜ややきつい)を目安にします。痛みについては「運動中・運動後に痛みが強くならない」「翌日に痛みを持ち越さない」が続けてよい範囲の目安です。少しずつでも続けることが、外出できる体力の維持につながります。
Avensでできるサポート
Avensは、理学療法士が運営する自費訪問リハビリサービスです。ご自宅へお伺いし、変形性股関節症の歩行・外出のしやすさを、実際の生活の場で支えるサポートを行っています。
- 股関節の動き・筋力・歩き方の評価と、痛みに合わせた運動メニューの調整
- 中殿筋・大殿筋を中心とした、股関節を支える筋力づくり
- 跛行(体の揺れ)をやわらげる歩行練習、杖・歩行車の使い方の練習
- 靴下・段差・乗り物の乗り降りなど、外出に必要な動作の練習
- ご自宅の動線・玄関の環境調整、ご家族への介助・見守りの助言
「外出がつらくなってきた」「杖や歩行車を使うか迷っている」「どこまで運動してよいか分からない」というご相談を歓迎しています。実際の生活の場で動作を確認できるのが、訪問リハビリの強みです。
注意点:見落としたくないサイン
次のような変化があるときは、運動を控えて医師・医療機関にご相談ください。
- 股関節の急な強い痛み・脚に体重をかけられない
- 脚を引きずるようになった・関節の動く範囲が急に狭くなった
- 安静にしていても痛む・夜間に痛みで目が覚める
- 痛みを我慢して歩き続けてしまう(変形性股関節症では逆効果になります)
- 人工股関節の手術を受けた方は、深く曲げて内股にひねる姿勢に注意(脱臼予防)。主治医の指示に従ってください
- 主治医から運動や荷重の制限を指示されている場合
痛みが続くときは我慢せず、早めに専門家に相談しましょう。運動は、必ず痛みのない範囲・安全な環境で行ってください。
まとめ・相談案内
変形性股関節症で外出がつらくなるのは、軟骨のすり減りに加えて、股関節を支える中殿筋の低下による歩き方の変化(跛行)が大きく関わっています。中殿筋・大殿筋を中心とした運動を痛みのない範囲で続け、杖や歩行車・関節保護の工夫を取り入れることが、外出を続けながら股関節を守る鍵になります。
Avensでは、ご自宅の環境とお身体の状態に合わせた、変形性股関節症のリハビリのご相談を受け付けています。LINEから気軽にメッセージをお送りください。
ご相談・お問い合わせは無料です。気になる症状やご希望を書いて送るだけで、理学療法士が直接お答えします。
執筆
最終更新:2026年6月10日
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を行うものではありません。症状には個人差があり、痛み・急な変化・強い不安がある場合は、医師や医療機関にご相談ください。